私の好きなバイス

普段あまり使うことのない「バイス」という地味な工具ですが、当店では意外と人気のある商品です。そんな「バイス」について、感じたままに紹介させていただきます。

バイス（万力）とは、いろいろな作業で材料を固定するために使われる工具です。金属加工業や建築・建設業、美術・工芸などの専門性の高い現場のほか、DIYやホビークラフトで一般の家庭でも使われます。

具体的な用途は、切断や切削、研磨、組立、溶接、仕上げなどを行う際の材料の固定です。他に材料を接着する際に、接着剤が固まるまで固定するといった使い方もあります。

ここでは、代表的なバイスについて紹介します。

バイスの種類

リードバイス

リードバイスは横バイス（万力）とも呼ばれ、最も代表的な機種です。バイス本体をボルトなどで作業台に固定して使用します。

ヤスリやタガネなどを使った作業や、組み立てをする際によく使われます。また、強固に固定が可能なことから、ハンマーなどで衝撃を与える作業でも使用されます。さらに、金型などの仕上げと言った精密性を要する作業にも適しています。

リードバイスには回転台が付属している製品もあります。回転台があると方向を自在に変えることができるので、作業性が向上します。また、付属していない場合でも、後から取り付けることができます。

ベンチバイス

ベンチバイスは、クランプを使って作業台に脱着するタイプの機種です。

リードバイスが、作業台に一度固定すると取り外すことはほとんどないのに対して、ベンチバイスは材料を固定す口金のほかに、作業台に取り付けるためのクランプが搭載されているため、作業内容に応じて簡単に設置・取り外しができるようになっています。

取り付けバイスとも呼ばれ、DIYやホビークラフトなどで使われることも多く、家庭で最もよく使われている機種です。

マシンバイス

マシンバイスはリードバイスなどに比べると精度や剛性が高く、ボール盤やフライス盤などの工作機械を使用する際に、対象物をしっかり固定するために使われます。

バイスはボール盤やフライス盤のテーブルの上に取り付けて使用します。口金によって対象物を挟んで固定するのは他のバイスと同じですが、口金を締め付ける機構は、リードバイスと同じネジ式のほか、メカ式や油圧式、空圧式などがあります。メカ式の中には、工作物の浮き上がりを防止する機能が搭載されているものがあります。油圧式は弱い力で強力な締結が可能で、空圧式は工作物の固定の自動化に向いています。

精密バイス

精密バイスは、工作機械でより精密な加工をするための機種です。

本体が精密に研磨されているので、材料との接触面や本体の取り付け面などの寸法が高精度になっており、高い水準の直角度や平行度を実現しています。

工作機械の種類に合わせた専用の精密バイスが多数販売されていますが、汎用のものも販売されています。

また、精密バイスには作業中の浮き上がりを防止する機能がついたものも多いです。

ヤンキーバイス

ヤンキーバイスは機械加工をする材料を固定するための機種で、マシンバイスの１種です。主にボール盤に取り付けて使用し、穴あけ作業をする材料を固定します。

ヤンキーバイスの本体は側面と底面が直角になっているため、横置きや縦置きでも使うことができます。そのため、底面を下にして工作物を固定する一般的な使用方法だけでなく、側面を下にして工作物を固定しながら作業できるメリットがあります。

ちなみに名称の由来は、アメリカのYankee tool社が作ったバイス輸入されて「ヤンキーバイス」と呼ばれるようになった、と言われています。

シャコ万力

シャコ万力は、口の開きをボルトによって調整し、口に対象物を挟んで固定するバイスの１種です。対象物を挟み込んで固定する工具という点では他のバイスと同じですが、どちらかと言うとクランプに近い役割を果たす機種です。ちなみに、日本ではバイスの分類に入りますが、日本以外ではクランプに分類されます。

シャコ万力は手軽に持ち運びができ、使う人の環境や状況を選ばないので、趣味で工作をする人やDIYが好きな人からも人気があります。

シャコ万力は、ネジ留めや仮組み、接着、溶接、穴あけといった簡単な作業・加工時に用いられる機種です。強固な固定が必要な研磨などの加工には向いていません。

名称の由来は、英語で「吊り金具」を意味する「シャックル」が語源とされています。形が似ているためです。ただ、「蝦蛄万力」と書くこともあって、海に住む「シャコ」が語源とする説もあります。

まとめ

バイスには他に、ベタバイス、アングルバイス、サインバイス等がありますが、今回は当店で取り扱うことの多い６種類のバイスについて紹介させて頂きました。地味で目立たない工具ですが、その活躍の場は多岐に渡っています。基本的には専門の工具なので、家庭で使うことは少ないと思いますが、この記事を読んで興味を持っていただき、日曜大工等で活用される方が増えれば嬉しく思います。